Best of TA・KU・MIは、感性・技術ともに優れたテキスタイルを認定し、日本のテキスタイルの素晴らしさと可能性を開拓することを目的に新設されたプログラムです。
9月28日に第1次審査が行なわれ、応募総数138名/258点の中から、60点の作品が選ばれました。この60点の入選作品はJFW-JC2010AWで展示発表され、会期中に審査員(審査委員やバイヤー、デザイナー等)による最終審査で「大賞」「優秀賞」「スチューデント賞」が選出されました。
審査講評 |
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新しい審査方式と展示表現でのテキスタイルのコンテスト。前回に比べ応募点数は少なかったものの、投票方式での民主的な選考は、本来の服にしやすい、トレンドを感じる、など使用する側のニーズに近い作品が選出されました。ビジュアル的メッセージよりも、技法を駆使して制作された風合い、触感、手持ち感、など現実感のある素材の良さ、が選考のポイントになったようです。
その反面、学生作品の応募では、思考し、時間をかけ、新しい時代感が提案された作品が選ばれました。 |
JFWジャパン・クリエーション大賞「経済産業大臣賞」 |
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No.18
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氏 名: |
東瀬 慎(とうせ まこと)さん |
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所 属: |
福島県ハイテクプラザ 福島技術支援センター |
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作品名: |
パーフェクトシルク |
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混 率: |
Si100% |
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企画意図: |
シルク本来の風合いを極限まで追求した、絹100%の無染色ニット。特殊な糸加工(特許3190314)により開繊性と伸縮性を付与し、ダブルラッセルのセンターカット技術と組み合わせた産地間コラボ作品。(糸加工:福島 経編み:福井) |
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講 評: |
シルク本来の風合いを極限まで追求したというだけあり、ダブルラッセル編の技法で、バルキーかつ、カジュアルでエレガント、そしてシルクならではの高級感と肌触りで、多くの票を獲得し、受賞になりました。 |
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優秀賞「製造産業局長賞」 |
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No.7
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氏 名: |
酒向 克昌(さこう かつまさ)さん |
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所 属: |
株式会社ソトー |
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作品名: |
銀河 |
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混 率: |
W100% |
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企画意図: |
ウール改質加工とビーバー加工により、繊細な起毛感と軽量化、カシミヤタッチを実現。さらに耐久光沢加工を付与することで、高級感のある光沢、動きのある光沢を表現しました。 |
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講 評: |
ソトーの加工技術を駆使して制作された現代感あるシャープなウールです。光沢加工とビーバー仕上げで、今までにない異質感と高級感が表現され、かつ軽量感から受賞となりました。 |
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優秀賞「製造産業局長賞」 |
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No.20
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氏 名: |
佐藤 功(さとう いさお)さん |
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所 属: |
墨田革漉工業株式会社 |
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作品名: |
メタリックグレイブル |
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混 率: |
豚革100% |
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企画意図: |
東京都で得られる豚革を用いてワニ革とも玉じゃりとも思える立体感あふれるメタリックの革を作った。値段も高くなく量産も問題ない。一枚の注文にも対応出来ます。 |
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講 評: |
東京都の豚革を使用し、立体感あふれるメタリックな加工は、レザーメタリックというトレンドにもマッチし、ピッグの存在を忘れる楽しく新しい提案、と地域の活性化も含めての選出となりました。 |
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スチューデント賞 |
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No.17
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氏 名: |
高宮 修平(たかみや しゅうへい)さん |
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所 属: |
Chelsea.College of Art and Design |
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作品名: |
ショートケーキと方眼紙 |
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混 率: |
C100% |
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企画意図: |
方眼紙の中にショートケーキを表現しました。方眼紙のマス目から生まれたいちごはその形を変え、様々なパターンへと変化していきます。 |
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講 評: |
方眼のマス目がケーキに変貌してゆくと言うユニークな思考から生まれたパターンのプリントで、歯切れの良いプリント提案が評価されました。ビジュアルメッセージとしてのプリントは新鮮さが命です。 |
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スチューデント賞 |
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No.29
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氏 名: |
斎藤 綾子(さいとう あやこ)さん |
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所 属: |
東京造形大学 |
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作品名: |
dawn |
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混 率: |
W100% |
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企画意図: |
織り物のテクスチャーはおもしろくもっと立体的になってほしい、そういう想いから組織を考えました。スパンテクスで縮めることによって浮いた糸は、想像以上に手触りが良いものになりました。 |
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講 評: |
立体的な織物を作りたい、とスパンデックスの使用で考えだされた組織の手織りで、夜明けを思わせる落ち着いた色調とともに、両面の肌触りのよい作品が生まれ、受賞となりました。 |
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審査委員講評 |
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「初のBest of TA・KU・MIを終えて」 |
審査委員長
皆川 魔鬼子 氏(株式会社イッセイミヤケ 取締役) |
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最終審査では、服にしやすいということが一番のポイントになったように思います。
見た目の美しさだけでは商品にはならない。デザインしやすく服にしやすいということに重点が置かれると、ビジュアルよりもタッチや着心地が重要になってきます。触れてみたいと思わせる魅力、リーズナブルなのに高そうに見える、着る人の評価が高められる、そういったものが求められている時代だと思いますし、Best of TA・KU・MIに求められるものも、より難易度の高いものになっていくと思います。
今回の受賞作品は主食のような実質的な素材が多かった。しかし、食事には主食だけなく副菜が必要なように、プラスアルファの部分も無視してはいけないと思います。いろいろな提案があっていい。傾向として黒い色が目立ちましたが、今後はきれいな色、着たいと思わせる色の提案にも工夫が欲しいです。
たくさんの人に応募してもらうことで、テキスタイルだけでなくファッション産業の発展にも繋がっていくと思っています。常に新鮮さと夢を与えつづけることを諦めずに、匠のテキスタイル作りをしていって欲しいと期待しています。 |
本間 正章 氏(mastermind JAPAN テザイナー) |
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商業生産前提を明確に打ち出しているので、全体的にプレーンなものが集まるかと思っていましたが、よく見ると「普通じゃない」。アパレル・メーカーにとってはとても興味の持てる内容でした。商品として扱うことでのできる内容に変わったということを上手くアピールしていければいいですね。派手に飾り付けられたコーナーではないので、通りすぎてしまう人もいるかもしれませんが、これを見ないデザイナーがいたら残念です。今回の展示方法は企画意図・説明もわかるし、気軽に触ることができるのもいいと思う。一次審査が終わった時には、最終はすんなり選べるだろうと思いましたが、一つ一つが魂のこもった作品だと思ってじっくりと見ると、再確認できることもあり、10点に絞り込んでさらにそれを絞り込みと、結局一時間ほどかかりました。
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堀 肇 氏(株式会社三陽商会 事業本部マーケティング開発室 素材開発チーム担当課長) |
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これまでは見た目が面白い作品が多かったが、再現性できるものという条件を付けたことで、より本物志向のクオリティの高い作品が集まったと思います。すぐに使いたいものも多くありました。
玄人受けする分、一般の人にはつまらないかもしれませんが、シルクやウールなど普通の天然繊維で新しさを表現するなど、商品化して面白そうな作品が多かった。
出展者ブースのコレクションと違うのは、商業ベースの作品ではないだけに、意表を衝いた作品がいくつもあったことです。 |
竹内 忠男 氏(スタジオアヴニール 代表) |
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Best of TA・KU・MIは、これまでのテキスタイルコンテストから審査方法も変わり、以前はアートに走ったものが多かったのに比べ、よりビジネスに沿った内容が増えてきました。もちろん感性の部分ではそういったアート的なものも必要ですが、全体的としては使えながら新しさも表現できているという、バランスの取れた良い内容だったと思います。
展示方法も見て、触ってシルエットが確認できるのが良かったです。個人的には日本が誇れる技術を持っている企業はもっとあるので、そういったところも参加してくれたらと思っています。 |
喜多 正子 氏(TEXTILE CUBE テキスタイルプランナー) |
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今回から再現性が可能なことという制約を付けたおかげで、バランスの取れた良いものが多くあり、審査が難しかったです。ジャカードやカットなど日本独自のテクニックを使ったアーティフィシャルで素晴らしい作品と、実需向きですぐにでも洋服を作りたいと思わせる作品との2タイプに別れていました。 来場者の間でも、価値観を伝えるために日本素材を使いたいというブランド関係者中心に好評です。来場者に投票させる方式にしたことで、プロの視点やバイヤーの視点など複数の視点が合わさり、フェアな審査になると思います。 |
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