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どんな分野でもそうですが、改革が成果をあらわすには時間を要します。このところ企業はもとより、スポーツの世界でも「構造改革」がメディアをにぎわしていますが、ジャパン・クリエーション(JC)が改革に着手したのが一昨年でした。そして、それまでの開催内容にメスを入れ、企画を一新して開かれたのが昨春の春夏展でした。
 ファッション・ビジネスにとってシーズン性は不可欠なものですが、JCは年1回の開催が続いていました。出展者にとって自社の内容を知ってもらう。これが主旨ならば、年に1回の開催でも十分だったかもしれません。しかし、ビジネスに結びつけるとなれば、ヨーロッパの素材展と同じように、春夏と秋冬に分けた展示会が最低必要条件となります。
 そのシーズン別開催となったのが昨年からで、2回目の今年は前回を大幅に上回る来場者となりました。もちろん、4万4000人を集客した秋冬展に比べれば、まだまだ集客アップが望まれますが、前年の2倍以上となった実績は明るい材料といえます。
   その要因を挙げれば、ひとつは「プロモーション」と「ビジネス」に分けたゾーニングであり、いまひとつが新設された「Tex−Promotion」です。秋冬展のようにファッションショーやテキスタイル・コンテストなどの“イベント”がない春夏展は、会場の盛り上がりを欠きがちになりますが、産学連携の同プロモーションでは多くの学生がフォーラムを聞き入っていました。また、4月に初めて展示会が開かれた「SENSWARE」も、参加クリエーターをパネラーにしたフォーラムが2日間とも満員の盛況ぶりで、企画のバラエティが来場者の関心を集めていました。
 一方、次回に向けての課題もあります。それは「すき間だらけの会場」と来場者だけでなく、出展者からも酷評された空間です。これは次回以降に出展者が増えることで解消できることですが、対費用効果を考慮した空間演出は課題として浮き彫りになりました。
 さらに注文をつけるとすれば、メンズウエア用のテキスタイル展示が非常に少なかったことも改善すべき点といえます。レディスウエアに比べれば市場が小さく、テキスタイルでも画一的になりがちな側面をもつメンズ素材ですが、それでもバイヤーニーズはあるはずです。このあたりも次回に期待したい要望のひとつです。
 「競争相手のいない技術を確立する」——この出展者の力強いメッセージが、改革の推進力になることを確信して、次なるジャパン・クリエーションに期待してください。


 

ユマ コシノ アソシエイツ 小篠ゆま 氏
JCはクリエーションの塊+ビジネスであって欲しい

 ここ数シーズンスケジュールが合わなかったので、久し振りの来場になってしまいました。以前は産地単位のブースが目につきましたが、今回会場を回ってみると個別の生地メーカーの出展が増えていて、以前より見やすく、機屋さんの個性・ポイントも伝わりやすいと感じました。その分各ブースの良し悪しも明確に見えてしまいますね。
 今回はゆとりのあるスペースとなっていたので、インデックスのテーブルがもっとずっと長いものであったほうか見やすかったのではないでしょうか。またクリエーションは糸や素材から始まるのですから、メイド・イン・ジャパンとしてのイメージ・コンセプトを打ち出せるクリエイティブチームなどと連動し、話題性・インパクトある打ち出しといったものも必要な気がします。ジャパン・クリエーションという素晴らしい名称通りの、プロフェッショナルのクリエーションの打ち出しが求められるようになってきていると思います。
 私自身は、JCに育てられたという思いがあります。ジョイント・コレクションである尾州コレクションなどをきっかけに、産地と関わり取り組んできました。だからこそJCにはクリエーションの塊がここにあるといえる場であって欲しい。それは面白いものだけ作ればいいものだということではありません。またクリエーションの中にもビジネスがあるという提案を期待しています。

 
 

Mastermind JAPAN 本間 正章氏
「メイド・イン・ジャパンを世界へ打ち出すために」という意気込みで来場

 ファッションに携わる人間なら見なくてはいけない展示会だと思っているので、毎回必ず来場しています。今回はビジネスゾーンの方が見やすかったですが、各企業の出品内容はプロモーションゾーンとの境目が判然としなかった。
 最近はインデックスコーナーを見ないようにしています。全部のブースを、一軒一軒じっくりと時間をかけて見たいからです。その中でスペシャルなモノと出会いたい。そしてそれを製品にし、メイド・イン・ジャパンとして打ち出していきたいという意気込みで来ています。
 度々残念に思うのは、ブースによっては客を選別し、ここから先は見せない・予約されないと説明できないというような対応をされる場合があることです。服装のテイストで判断されているのだと思いますが、それではスペシャルバイヤーのネームホルダーを付けている意味もないような気がします。マスターマインドは日本の最高技術といわれるものをもちいて20〜30万円のという製品を作り続けていますので、素材の価格がメートルいくらというのはそれほど問題ではない。メートル15万円という生地も作ったことがありましたし。当初はそんなものは売れるはずがないと酷評されましたが、パリ・メンズコレクションでもメイド・イン・ジャパンのすごさにこだわりつづけ、評価してもらえるようになりました。だから尚更、良い技術を持ち、良い生地を作っているのはわかるのに、そういう対応をされるととてもがっかりとしてしまいます。モノを買っていただくというのは大変なこと。「いらっしゃいませ」と会場内で声が飛び交うくらいで本当だと思います。
 糸も生地も染め・加工もそして最終製品も一体化してメイド・イン・ジャパンが世界に評価されるようになるためには、お互いがギブ・アンド・テイクのフェアなビジネスと意気込み、信頼関係を築けることが大切だと思います。また、そういった姿勢が見える企業なら、スペシャルなものが見つからなくても、あと一歩のものがあれば取り組みを進めたいという気持ちになります。
「物づくりに取り組みたいのか、量を売りたい企業なのか」や、ビジネス上の条件面なども事前に明確に提示されるともっと取り組みやすいですね。

 


 

NYのデザイナーも来場

ソトー
取締役 事業部長 営業管理部長 遠藤美喜雄 氏

 これだけ来場者があるとは思っていませんでした。サンプリングの依頼も多いです。ニューヨークのデザイナーや中国のバイヤーもブースに来られました。ブース内の展示は、グループ内の4工場からセレクトし、さらに絞り込んでいます。春夏向けということで、ウールや綿、麻素材を出展していますが、天然繊維が見直されていることも一因でしょうか。
 企業単独での出展でなく、できれば尾州産地として10倍くらいの大きさのブースでアピールしたいですね。産地の特色である小ロット・QR対応、器用な後加工やモノ作りを訴求したい。アパレル・小売りを含め、尾州産地への関心は高いですから。実際の商談は産地へ来てもらわなければ、無利だと思っています。JCはバイヤーにアピールする場でしょう。「尾州産地改革推進会議」もスタートしたことですし、一心同体でやって行きたいですね。

 
 

韓台のバイヤーが増加

オガワテキスタイル
生産部部長 吉村知泰 氏

 初日よりも2日目と、徐々に増えてはいますが、来場者数が少ないですね。当社はプロモーションゾーンに出ていますが、ここはビジネスゾーンに比べると出展者数も少ないですし。当社は12月のJCでは文化服装学院と合同企画で製品を作っていただく。ビジネスゾーンだと学生が入れませんから、プロモーションゾーンに出展しています。
ブースには既存客以外に、インデックスコーナーで生地サンプルを見て来られる方がいらっしゃいます。緯にフィラメントを打ち込んだものなどファンシー系の光沢感のあるテキスタイルの人気が高いです。通りがかりに製品サンプルを見て、立ち寄られる方もおられます。今回は韓国や台湾のバイヤーが多いのも特徴ですね。冬物は韓国にもけっこう輸出していますが、春夏物も増やしたい。フラットな素材ではなく、ファンシー系の方が尾州らしくていいと思います。

 
 

出展する価値あり

久山染工
社長 久山徹 氏

 今回はこれまでよりも来場が多いですね。(最終日の午後の時点で)名刺が残り3枚になってしまいました。しかも、バイヤーのほうが積極的で、「今度訪ねてきてくれ」とか、「ぜひサンプルを送ってくれ」とか、非常に反応がいい。これだけ手応えがあると、出展する価値がありますよ。
 来場される方は婦人服がメーンですが、紳士服や輸出、さらに自動車関係など幅広い分野のバイヤーが来られたのも特徴です。商品では今回、メタルレザープリントが最も人気があります。

 

 

 

JAPAN CREATION 2008S/S 来場者数

 

1日目

2日目

3日目

合計

アパレル

1,254 2,312 2,361 5,927

小売

127 257 310 694

問屋・商社・企画会社

865 2,020 1,964 4,849

一般

556 1,143 743 2,442

プレス

68 58 52 178

海外

27 25 37 89

特別ご招待

449 893 936 2,278
合計

3,346

6,708

6,403

16,457