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産学コラボレーション検討委員会委員
永森 達昌氏

 新たな産学連携としてスタートしたTex−Promotionで最初のテーマとなったのがプリントです。私はテキスタイルを専門に40年も仕事をしてきましたが、テキスタイル科をもつ学校が少ないのが現状です。もちろん、そうした中で学生が手作りでテキスタイルを製作するケースもありますが、産業界に刺激を与えるようなインパクトがない。ここを解消して、若い感性をテキスタイルに反映させようというのが、このプロモーションの狙いです。
 今回は、エリア・キムとバーナード・ネヴィルの2人のプリント作品を展示しました。2人とも世界的に優れたデザイナーですが、いまでも作品の輝きは薄れていません。あえて2人の作品を若い人たちに見てもらいたい理由は、彼らの発想力が一番ですが、テキスタイルと最終製品の一体感、それに微妙なデザインのニュアンスです。
 単に生地をデザインするのではなく、彼らの感性をフィルターにした時代性。ここから生まれるデザインは、使われる素材や色、デザインのどれもが奥深く、厚みを感じるプリント柄になっています。プリントは、柄と素材、手法の相乗性がもたらすものですが、そこに時代を感受する感性が求められます。それによって平面なものが立体感のあるデザインになっていきます。
 このあたりの考え方や物作りのありかたを、このプロモーションを通じて広めて生きたい、と思っています。

【パネリスト】
  竹内 忠男氏(スタジオアヴニール代表)
  永森 達昌氏(オフィス*ナガモリ代表)
  宮本 英治氏(みやしん株式会社代表取締役社長)


 これまでの「産学連携コーナー」を発展する形でスタートしたのが“産産学学”というコラボレーション。日本発のテキスタイルを、より魅力あふれるものにするためにスタートした、新しい形の産学連携ですが、それについてのフォーラムが開かれました。
 まず、新たな産学連携の仕組みについてコーディネーターを兼ねた竹内氏は、次のように解説しています。
 「従来の産学連携は、テキスタイル企業がつくった生地を学生が作品にする、というものでしたが、そうした産学連携に加えて、デザイナーと産地企業、あるいはテキスタイルを学ぶ学生とアパレルを学ぶ学生とのコラボレーションを進めていく。それによって若いデザイナーや学生はテキスタイルの理解力が深まり、テキスタイル企業にとっては新しい刺激が受けられる。それによってテキスタイルの価値を高めていこう、というプロモーションです」
 Tex−Promotionの第一弾がプリントのクリエーションですが、プリントを学ぶ必要性について永森氏は、次のように語っています。



 「最近のプリント柄を見ていると、グラフィックと加工処理に頼りすぎていて、柄に立体感や感性的ニュアンスが感じられない。それだけに、いまこそ若い人たちにプリントの学んでもらいたい。今回の展示では、1980年代〜90年代後半のプリント・ファブリックを紹介していますが、このとき一緒に仕事をした2人のデザイナーのクリエーションは、若い人たちが学ぶべき点が多い。 デザインワークにあたって、彼らは社会的な“コト”から発想し、柄や素材に落とし込んでいく。日本では“モノ”から入っていくケースが多いが、プリントに限らずデザインの考え方も、このプロモーションを通じて学んでもらいたい」
 また、産地企業の立場から宮本氏は、日本のテキスタイル企業の方向性について、次のように語っています。
 「日本のテキスタイルが優秀であることは、国際的に認知されています。現実に、海外の著名ブランドだけでなく、多くのブランドが日本のテキスタイルを使っているし、使いたがっている。ところが日本国内では、テキスタイルだけでなく、縫製や編立てなどの工場が激減しています。当社では、イッセイ・ミヤケなどデザイナーとの取組みが続いていますが、この「取組み」が大切です。取組みには、お互いの協力関係が必要ですが、それとともに継続も欠かせません。この協力と継続がコラボレーションの成果を大きくしていくわけで、日本のテキスタイルをグローバル化していくには、優秀なテキスタイルと才能あるデザイナーのコラボレーションが必要です」
 

 10日のJCフォーラム TOKYO FIBER ’07は、パネリストを前日とは代えて、松下電器産業上席審議役(デザイン担当)の植松豊行氏、本田技術研究所四輪開発センターデザイン開発室第1ブロッククリエイティブ・チーフデザイナーの箕輪元明氏、ソニー・クリエイティブセンター・コンスーマープロダクツデザイングループ総括部長の市川和男氏を招いて行いました。
 松下電器産業は今回、社内の若手デザイナー16人のコンペで、「自由になるカーペット」を作成しました。フェイクファーで電気カーペットに使われるチュービングヒーターを覆った細長い暖房機器です。このまったく新しい暖房機器は、「流通方法も新しいビジネスモデルを考えてみたい」と、植松氏は抱負を述べられました。
 本田技術研究所は自動車の外表皮を繊維で包んだモデルを展示しました。会場で若い女性が一点ずつ抱きしめて「可愛い」と発言していたのが、印象的だったそうです。自動車業界では2020年には、ガソリンの代わりに燃料電池で走る時代が来ると予測されています。この変化は地球環境を何とかしたいという生活者の想いが背景にあります。若い女性が「可愛い」といって喜んだ、その潜在的欲求を考えると、実際に商品化するためには安全性やコストなど高いハードルがあるものの、実現の可能性は高いと発言されていました。モデレーターの原研哉氏からは、外表皮の繊維に触媒で空気を浄化する機能を付けられれば、自動車が走れば走るほど空気が浄化される可能性もあるという指摘もありました。
 ソニーは「手のひらにのるテレビ」を開発しました。近年のテレビの大型化と真逆の商品です。これも来場者から「可愛い」と感嘆が上がったそうです。原氏は、ここ20年の革新性はテクノロジーがもたらしたが、今後は評価基準が数値ではなく、「気持ち良さ」など感覚寄りに方向転換するのではないかと、指摘されました。ソニーの市川氏も、パーソナルオーディオの開発に取り組んできただけに、今回の繊維との出会いは「プロダクツが今後変わっていく可能性を感じさせる」と発言。繊維産業と他業界との出会いが今後、互いの「共進化」を促し、まったく新しい可能性を生み出すことを期待させるフォーラムとなりました。
 





 

 4月に開催した「TOKYO FIBER ‘07」展の記録映像を期間中、プロモーションゾーンの一角で流しています。スクリーンにはテキスタイルをイス張りのように、部分的に留めて凹凸感を付けたものを採用しており、その効果もお楽しみ下さい。
 同展はグラフィックデザイナーや建築家をはじめ、ソニー、本田技術研究所、松下電器産業、セイコーエプソンなどが参加し、日本のテキスタイルを使った作品のクリエイトに挑みました。テキスタイルを外装に使った超小型テレビや自動車など、斬新な発想の作品が並び、「日本製テキスタイルはすごい」と再発見した人が多かったようです。期間中に1万2000人が来場しました。既存の衣料品やホームファッション以外の、幅広い分野へ繊維がマーケットを広げる可能性を強く感じさせるものとなりました。6月にはパリでも開催されます。
 また、9日と10日の両日、同展の参加クリエーターを交えたフォーラムがJC会場内にて行われています。参加クリエーターのメンバーが日によって異なりますので、ふるってご参加下さい。


 

コットン・サービス・センター [C-01]
5月10日はコットンの日〜コットンの奥深い魅力を伝えたい〜

 日本綿業振興会が展開するコットン・サービス・センターのブースには全国の機屋、コンバーター、紡績55社による1300点ものサンプルが多彩に提案されています。
 ちょうどJC会期中の5月10日は「コットンの日」。業界と一般消費者に対して「コットンUSAマーク」の認知度向上を目的に、Tシャツデザインコンテストなどのイベントを開催しています。今年は、ミスター・コットンUSAに新庄剛志さん、ミセス・コットンUSAに菊池桃子さん、ミス・コットンUSAに長澤まさみさんが選ばれました。
 コットンというと、Tシャツやトレーナー、デニムなど、スポーツカジュアルの定番素材のイメージが強く、とくに若い世代にはタウンウエアとして定着しています。ですが、コットンは加工によって千変万化する奥深い素材です。加工次第で、麻やシルク、ウール、合繊など、様々な素材の表情とタッチを演出できます。JCでは綿100%ながらシワのような形状記憶を施したもの、プラチナコーティング加工で上品な光沢感を表現したものなど多彩に出展し、カジュアルだけでなくグレードの高いドレッシーなレディース・アイテムへの広がりを打ち出しました。

 
 

日本ホームスパン [A-20]
今回展で欧州の有名メゾンが引き合い

 日本ホームスパンはファンシーツイルを得意とするメーカーです。すべて別注対応で、要望に応じてイチから生産します。受注ロットは25メートルから。欧州のトップクラスのテキスタイルメーカーと比肩する実力は国内外で高く評価されており、顧客には欧州の有名メゾンをはじめ、国内のデザイナーブランドが名前を連ねます。
 今回はシルクを中心に、麻やウール、合繊と複合したテキスタイルを展示しています。今回展ではこれまでに、欧州の有名メゾンや韓国のバイヤーから引き合いを受けたそうです。

 
 

久留米絣(井桁の会) [B−32]
古くて新しい。伝統を現代の感性で表現

久留米絣の産地である福岡県広川町の、岡本商店と14軒の機屋との相互理解の場として発足したのが井桁の会です。糸から染め、織りなどの各段階での問題提起からシーズンのテーマ決めまでを行う勉強会を開いています。久留米絣の特徴は風合いが良いこと、夏は涼しく、冬は暖かいこと。そして先染めで柄を作っていることです。20年ほど前からアパレルの製品にも着手。儀右ェ門、giという2つのブランドを百貨店で展開していますが、産地の活性化のためには自社ブランドだけでは不足だと考え今回JCに初出展することになりました。
 久留米絣としては海外との取引、取り組みは古く。最近ではプレタポルテ・パリ展、ティッシュプルミエ展などにも出展しています。
 JCでは昔ながらの古典・伝統柄とクリエイターと組んだ新しい柄、久留米絣の残布をパッチワーク状にした十二単パッチワーク等を出品していますが、若いクリエイターや海外バイヤーの方々、学生などが非常に興味を持ち、熱心に見ていただいています。パリコレに参加するデザイナーの方がブースを訪問し、発注もいただきました。

 
 

ケーエイトレイディグ [A-05]
〜世界で一つ、縦横に伸縮性のある綿織物で勝負〜

 縦横に伸縮性を持たせた綿100%の織物を提案しています。これまでは主に輸出が中心でしたが、新しい機会・出会いを求めて、JCへは初出展となります。綿100%の織物で縦横共に伸縮性を持たせたものというのは、国内だけでなく、世界にもなかったものだと自負しています。
 今回は7種の織物に凝縮して展示していますが、ソフトでドレープ性があり、適度なシャリ感と軽さが特徴です。また、何より製品にしたときの着心地の良さが持ち味となっています。長年の努力と工夫によって、自重で生地が伸びてしまうこともありません。ファッション衣料に限らず、インナーウエア、ベビー、マタニティー、スポーツ、インテリア、医療用とさまざまな用途への対応が可能だと思います。

 

JAPAN CREATION 2008S/S 来場者数

 

1日目

2日目

3日目

合計

アパレル

1,254 2,312 2,361 5,927

小売

127 257 310 694

問屋・商社・企画会社

865 2,020 1,964 4,849

一般

556 1,143 743 2,442

プレス

68 58 52 178

海外

27 25 37 89

特別ご招待

449 893 936 2,278
合計

3,346

6,708

6,403

16,457

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