来場者数 (主催者発表) 4月23日= 6,521名 / 4月24日= 7,172名 / 4月25日= 7,192名 [合計] = 20,885名
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産地と学生のコラボレーション“JAPAN Tex-Promotion”の第2弾が、今回のJFW−JCで本格的にスタートしました。
昨年の「プリント」に代わって今回のテーマは「加工表現の拡がりを求めて」。協力企業が出品した加工技術が駆使されたテキスタイルが揃えられたブースでは、応募をめざす学生たちが驚きの表情で製品を手にしていました。
Tex-Promotionは、テキスタイルへの深い知識を持ち、クリエイティブなデザイン発想力を持つ人材を輩出することを目的にした産学連携です。高度な産地技術と若い世代の発想により製作されたテキスタイルを用い、素材の持ち味を引き出したファッションを作成・展示する、というものです。
今回は、コラボレーションに協力する加工企業10社が、それぞれ特色のある加工品を、Tex-Promotion特設ブースに展示しました。このブースは、これから同プロモーションに応募する学生に向けて、加工技術を理解してもらうために設けられたものですが、訪れた学生たちは「想像を超える技術の高さに衝撃を受けた」「加工技術がテキスタイルの表情に欠かせないことを知った」などの反応を示していました。
また、23日に開かれた「加工表現の拡がりを求めて」と題するフォーラムでは、協力企業から㈱奥田染工場の奥田正美社長と小松精練㈱商品企画開発部の津田外己男部長がパネラーとなり、加工技術の現状とコラボレーションへのアドバイス。奥田社長は「学生の皆さんは気軽に来てください。遊びの感覚で新しいことをやりましょう」とコラボレーションを呼びかけていました。
さらに同ブースでは、静岡県別珍・コール天剪毛工業組合による別珍・コールテン剪毛(カッチング)実演が行われ、馴染みのない作業に多くの人々が見入っていました。
同社は、ウール素材を中心に、物理的・化学的な加工を施して仕上げる特殊加工技術をもつ染色整理の企業です。業界トップクラスの設備を導入し、高品質なモノづくりへの期待に応えています。その加工の1つが“デニムール”で、ウール布帛の後染め特殊加工によって、コットン・デニムのようにウール繊維で中白染色を実現しました。このほか代表的な加工としては、綿や綿/合繊の光沢を高めたり、ウール混にナチュラルな光沢を表現したりした“アクアクリン”シリーズなどがあります。
同社が開発した「ビンテージ繊意(せんい)」では、さまざまな原糸や織物(編物)のもつ天然性を生かしながら、円熟度の高い“匠の染色加工技術”によって創り出した、合繊でも化合繊でも綿でもない、まったく新しい質感のテキスタイルが誕生しました。その特徴は、天日干しのようにナチュラルでリラックス感のある表情、ふくらみ感とエアリーな風合い、コンパクトかつ新しいドライ感…などです。
薄地から中肉、厚地、プリントまで、合繊を中心にニーズにあった機能加工・感性的な加工など幅広い技術を駆使してテキスタイルを創造している福井の企業です。今回は、細番手のポリエステル・スラブ糸と天然繊維の組み合せに後加工を加え、エアリーな軽さとナチュラル感をプラスしたシルフィ。そして金属的な質感や独特なぬめり感、上品で高級感のある光沢を表現したエスメタリオンに力を入れています。風合いのための二次加工はもちろん、快適、清潔、安心・安全、蓄光、芳香など様々な機能加工ができます。
綿やポリエステル/綿混など、肉厚な織物を中心に加工する染色企業です。プレミアムピーチ、バイオ加工、コーティング加工、樹脂加工などの組み合わせにより、さまざまな色と風合いが表現され、とくに染色では反応染料や硫化染料などを用い、独特の色味を出しています。さらに同社が得意としているのが“ブラック”のシリーズで、墨にはじまり多様な加工方法によって、バラエティ豊かなブラックが揃えられています。
一つには藍染め、一方は織り方に工夫した生機をストックして、染め加工の依頼に応えるという染織工場です。今回は経糸に藍染めの綿を、緯糸に麻を用いてストライプを表現したものや、抜染で柄を表現したもの、生機では草木染めを主力に提案しています。藍染めなどはメンズカジュアルウェアからの引き合いも増えてきています。差別化したクラス感のあるカジュアルウェアに適しているのではないでしょうか。
キモノの中に息づいてきた日本の伝統的な染色技法を継承。これまでもマーブル染めや墨流し、絞り染めなどの技術を紹介してきましたが、今回はぼかし染めを中心に、サンプルにはリサイクル品を製品染めにし、展示しています。もともと京友禅に携ってきたが、これまで伝統的な技法が洋装に転用されることは少なかった。ぼかし染めは比較的、地染めに転用しやすい技法。段差のない美しい染め技術を見て欲しい。伝統工芸の世界は高齢化が進んでいるため、染色に興味を持つ若い人たちが増えていくことを望んでいます。
㈱エイガールズ
瀧定名古屋㈱
瀧定大阪㈱
㈱山﨑
JFW-JCは香港で開催されたインターストッフ・アジア・エッセンシャルにブースを設けてプロモーション活動するなど、国際化に力を入れています。出展企業の皆さんからは早くも、来場増を期待する声が聞かれます。人数はまだ少ないですが、今回も初日から欧米メゾンのバイヤーが来ていたようです。
欧米向け輸出を伸ばしている(株)エイガールズは今回、ブースに同社のテキスタイルを採用した欧州メゾンの製品を展示しています。大多数を占める日本人バイヤー向けですが、同社のブースは海外バイヤーが来られても対応できる態勢で臨んでいるそうです。
瀧定大阪(株)のブースでは初日、午前中に限ると素材をピックアップしたバイヤーの半数が海外からの来場でした。同社は海外向けにJFW-JCのDMを積極的に発送しましたが、初日の来場は全く新規の海外バイヤーだったそうです。同社はここ数年、メゾンなど中・高級ゾーン向けのテキスタイル輸出を大きくく伸ばしています。景気が急速に悪化した米国向けも、数%減と微減にとどまっており、認知度が高まったためと分析しています。
瀧定名古屋(株)の紳士服販売課のブースでは初日、3社の海外バイヤーが来場しました。欧米企業の香港にあるバイイングオフィスのスタッフで、瀧定グループの名前をニューヨークで知り、JFW-JC会場でもブースに寄ったということです。JFW-JCの出展者はレディス向けが多いこともあって、メンズの海外バイヤーは更に少ないと指摘していました。
(株)山﨑は今回も、オーガニックコットンを前面に出して提案しています。JFW-JC会場では毎回、期間中に1〜2社の海外バイヤーがブースに来るそうです。同社は香港に事務所があり、欧米向けに輸出しています。こうした実績もあって、海外バイヤーが来ても大丈夫なように態勢を整えて、JFW-JCに出展しているとのことでした。
フォーラム「ジャパン・テキスタイル〜世界市場への挑戦〜」が24日、フォーラム会場で行なわれました。スピーカーは(株)エイガールズの山下雅生社長、辰巳織布(株)の辰巳雅美社長、佐藤繊維(株)の佐藤正樹社長。コーディネーターは中小企業基盤整備機構の繊維産業支援室長の金井一弘氏。
輸出に挑戦した理由、苦労談、現状の取り組み、今後の戦略などを熱く語っていただきました。これから輸出に挑む企業へのメッセージでは、困難に直面しても乗り越えていく気概、やり切る気力の重要性が、皆さんが一様に強調したポイントでした。
フォーラム終了後には、中小企業基盤整備機構が作成した「海外輸出ガイドブック‐世界市場への挑戦‐」と同DVDが配られました。
メッセ・フランクフルト(香港)
トレードフェア・マネージャー
シンディ・チー 氏
JFW-JCはよくまとまったオーガナイズで、来場者も多い。商談も活発ですね。商品が優れているだけでなく、プレゼンのレベルも高いと思います。
日本語が話せない私が独りでブースに行っても、シンプル・イングリッシュで問題無く、意思疎通ができます。ただ、シリアスなビジネスには不充分かもしれませんね。しかし、語学の堪能な方のいるブースも多くありました。
JFW-JCでは今回、香港で開催するインターストッフ・アジアの紹介を行なっています。次回は10月8日から10日の日程です。
マスマーケットの中国に対して、香港はハイエンドのビジネスができます。欧米バイヤーも、中国へは中級からボリュームゾーンの商品を探すのがメーンで、ハイエンド商品は香港で買い付けます。香港展への出展は日本のメーカーにとって有益です。
(株)繊維リソースいしかわ
代表取締役
伊藤 靖彦 氏
これまでも石川県としては、金沢で展示会を開いたり、年1回のペースで(株)繊維リソースいしかわとしての単独展を行ってきました。昨年は六本木でも展示会を開催しましたが、これまでの単独展をやめ、次回、10月のJFW−JC内にいしかわ産地としての出展を決定しました。JFW−JCの内容の充実度、知名度を認識しての決定でした。
行政の支援もあり、明確に合繊テキスタイルの産地であるいしかわの特色を打ち出していくために、一つの大きな島を作った展示コーナーを設けていきたいと考えています。レディス、メンズ、スポーツ関連の25〜30社が集まり、多様な内容になると思います。地元産地の良さをPRすることは大切ですが、今後はファッション産業にたずさわる仕掛け作りが重要だと思います。谷本正憲・石川県知事も来訪される予定です。理解と支援に感謝しています。
『TFTにちょっと寄り道』
ビッグサイトに隣接する東京ファッションタウンの2階は、飲食・物販施設などが充実しています。特に便利なのは、100円ショップですね。JFW−JCには出張で訪れる方も多いでしょうが、文房具の不足、あるいは下着や靴下を忘れたなんていうこともありますよね。文具はもとより衛生小物、下着、ネクタイといった衣料品、食品までを扱う100円ショップはありがたい存在です。飲食店ではマクドナルド、サブウェイ、プロントといった軽食からお寿司、とんかつ、讃岐うどん他20店舗もありました。地域限定の東京じゃがりこ(カレー味)、オリエンタルラジオのオリ焼きなんていうお土産を買うこともできますよ。
来場者インタビュー
「ボイスノンヴァーニ」デザイナー 白木大地 氏
JFW−JCは大手アパレルメーカーもしくは量販向けという印象で、デザイナーズブランドの人間にとっては特徴に欠けるように思いました。一つ一つ探していけば、もちろんあるのでしょうが、それが埋もれてしまっている気がする。特徴が見えてきづらいのは残念です。
バイヤーズセレクトコーナーと、ビジネスゾーンの差別化も必要ではないでしょうか。例えば、バイヤーズセレクトに関しては、大手メーカーのバイヤーとデザイナーズブランドのバイヤーでは、セレクトする企業が違うと思います。企業としては小規模でも、すごい技術をもっていて、表には出てこない所というのもある。バイヤーズセレクトならそういう所に出てきて欲しい。クリエーターとの取り組み・提案という意味ではCBFの方が優れている気がします。日本のファッション産業の未来を考えるならば、JFW−JCとCBFの両方が必要なんです。これだけの規模を誇るJFW−JCだからこそ、大手アパレルメーカー向けに限らず、日本のファッション業界全体を考えて、それぞれに対応できるような提案をしていって欲しいと思います。
(株)コーラル C区-21
個性的な“衣装素材”を2万種も常備
会場のなかで異彩を放っていたのが同社のブースです。コンセプトは“衣装素材”。いわゆる舞台衣装にはじまる“衣装”用のテキスタイルを専門に扱っています。商品は大きく3つのグループに分かれており、舞台用とダンス用、ブライダル用など目的に合わせた材質や色柄となっています。この分野は、ユーザーのニーズが多様なだけに、つねに2万種のテキスタイルが常備され、要望に応じてフリーカットで販売しています。ちなみに最近の傾向は、ラメ使いにストレッチ、あるいは箔使いにパワーネット組み合わせなど、機能性を加えたものが増えています。
熊澤商事(株) E区-40
トリアセのストック販売
環境が厳しいだけに、企画提案や短納期対応の重要性が増しています。熊澤商事はトリアセテート主力に生機段階でストック販売していることが評価され、今回のJFW-JC会場でも盛況です。
いま最も人気が高いのはトリアセテートをベースに、フェザー調で軽いテキスタイルと薄地のファイユやデシンなどシルクを思わせる光沢のあるもの。フェザー調は薄地・軽量で表面変化があるのが特徴で、細番手のコットンを複合したものなどがあります。
広撚(株) E区-30
バイヤー数が倍増
広撚はJFW-JCの開催2日目、素材をピックアップしたバイヤーが昨年の2倍に増えました。来場増の一因として、JFW-JCに衣替えして始まった「バイヤーズ・セレクト・コーナー」を挙げていました。「前回は来られなかったが、優れた素材を見られるコーナーがあると聞いて来場した」と言うバイヤーが、数ブランド来場したとしています。
ブースでは素材とそれを使った二次製品サンプルを並べて展示して、分かりやすいのも好評です。寒さが厳しかった1〜2月、消費者は薄地の梅春物ではなく、すぐに着用できる防寒衣料を必要としていたのに売れ残った冬のセール品しかなく、店頭と消費者とにズレがあったと、同社は指摘しています。そこで、こうした消費者ニーズに合致した企画を提案し、確かな手応えを得たといいます。
ユニチカサカイ(株)(ユニチカ) E区-25
国内外の新規顧客を開拓
ユニチカサカイは、JFW-JCが国内外の新しい顧客を開拓できる展示会になったと評価していました。
国内バイヤーが増加した要因としては、店頭不振の影響で小売り企業のトップが今秋物から店頭を変えるように指示を出し、アパレルメーカーが熱心に新しい素材を探していることを挙げていました。
中国人バイヤーは、米国に代えてEU(欧州連合)向けの受注を伸ばすため、中国では入手できない素材を探しにJFW-JCに来場。韓国人バイヤーは好調なゴルフウエアなどの素材を、円安で為替メリットもある日本へ探しに来ていたそうです。
アイテムではワンピースやチュニック、スカートなどに代わる新しいボトムとして、リラックスして着用できる「レイドバック・スタイル・パンツ」を提案して好評です。素材はフルダル異収縮混繊の「エアリス5」やフルダル・ファインデニールの「ヴェルダム」など。このほか、濡れたような光沢の「リキッド加工」も好評です。
(株)DESIGN WORKS 1965 TOKYO E区-23
国内外のバイヤーが高い評価
デザインワークス1965TOKYOはJFW-JCに衣替えした前回展が、テキスタイル展の初出展でした。福井清輝社長が自らデザインして、浜松や岡山、尾州、富士吉田など天然繊維の産地を主力に、ハイカウントの綿100%からシルクや麻を打ち込んだ複合素材まで、こだわって作り込んだテキスタイルを製造販売しています。
同社は前回展で早くも、「こんなサプライヤーがあったのか」とバイヤーから高い評価を得ました。2回目の今回も国内をはじめ、香港や韓国、スペインなど海外からもバイヤーが来場しています。同社はすでに自社で、EUのメゾンやデニムブランドにテキスタイル輸出しており、今後一層の活躍が期待されます。
渡六毛織(株) E区-35
キュプラ混が好評
渡六毛織は、09SS企画では経キュプラ、緯に天然繊維を打ち込んだテキスタイル、先染めの格子柄が好評です。こうしたキュプラ混は北陸産地品が多いですが、同社は自社で生産しているため、独自のクオリティがあることが評価されています。ロットも別注で10反から受注しています。
栄レース(株) C区-09
繊細なリバーレース
栄レースは、「予想を上回る出展効果」としています。リバーレースはフランスから買うものと思い込んでいた来場者が多く、栄レースが日本で繊細なリバーレースを生産していることが、嬉しい驚きだったようです。
同社はプルミエール・ヴィジョンにも出展しており、そのこともバイヤーから信頼を得るのに寄与しています。
来場者インタビュー
デザイナー&イラストレーター 小野 原誠(おの もとなり)さん
前回の東京コレクションにデビューしたばかりで・・・。JFW−JCには新しい取引先の開拓にきました。特に刺繍やクオリティの高いレースなどを探しました。現段階ではまだサンプルをいただいた程度ですが、次の春夏の内容を進めながら発注していくことになると思います。大きな会社ではないので、デザインだけでなくパターン、縫製まで、すべてを自分でこなしています。中途半端なものは作りたくないから、縫製しながら仕立ても変えたり、ディテールを決めたりする。デザイン画は描きません。一通り行なっているから、生地とデザインの関係をよく考えるし、理解するようになった。
素材にはすごく興味がありますが、自主開発というのは自己満足の部分が強いような気がするんです。リスクも大きいですしね。じっくり探せば素晴らしいものはたくさん見つかるし、機屋の何十年も経験を積んだ方が作ったものの方が良いに決まっている。
今はとても忙しいですが、やりたいことを楽しみながらやっています。
来場者インタビュー
マルティプル マーマレード デザイナー 水原雅代さん
商品を手にしたときから“オーガニック”が始まる
ことしの春からオーガニック・コットンによる「Closet Angelica」(クロゼット アンジェリカ)というブランドを立ち上げました。このため、今回はオーガニック・コットンを中心に見て回りました。オーガニック素材を取り上げるきっかけは、3年前から食事を有機野菜に切り替え、オーガニックが身体にやさしいことを実感しました。その後、食事だけでなく、シャンプーや石鹸、寝装などに広がっていくのですが、オーガニック素材の衣服をさがすとなると、なかなか気に入ったデザインが見つからない。自分が納得するデザインが少なく、それならば自分で創ってみよう、ということになりました。オーガニック素材を使ってはいるけれど、デザインで共鳴してほしい。「これは好き…」と商品を手にしたらオーガニック素材だった、という商品にしたいですね。オーガニックの知識が商品を手にしたときから始まる。そうなるのが理想です。
来場者インタビュー
アーモンド・アイ デザイナー 白浜 利司子さん
約3年ぶりにJFW-JCに来ました。ずいぶんとイメージが変わりましたね。来て良かったです。活気があるわりにはスペースがゆったりと作られていて、見やすかった。以前はとりあえず出展しているというような企業も目に付きましたが、今回は商談にも結びつけていける実感がありました。
展示物ではテーマも含めてエコロジーの提案が増えてきましたが、実際にブースを訪れてみると生機がない、あるいは未だ試験中というケースが多く、ちょっと残念です。でも取り組みは重要なことですよね。エコ=オーガニックだけではなく、新しいテクノロジーはたくさんある。ゼロではなくても半減するといった工夫があれば、市場にも繋げていきやすいと思います。通常とは違う提案と、ビジネスに結び付けていけるテキスタイルの準備が大切なのではないでしょうか。
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