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 ジャパン・クリエーション2008S/Sが、9日から11日まで東京・有明の東京ビッグサイトで開催されています。昨年からスタートした「春夏展」は、会場を前回の平和島・東京流通センターからビッグサイトに移し、これにともない出展企業も前回の174社から207社に増加しました。
 一昨年にまとめられたJC改革によって、昨年から年2回開催となったほか、会場をプロモーション・ゾーンとビジネス・ゾーンに分け、ビジネスに直結した内容になりました。今回は、新たに“産産学学コラボレーション”として「JAPAN Tex−Promotion」を新設。これはテキスタイル企業とのコラボレーションによって、デザイナーや学生のテキスタイルに関する知識を高めてもらおう、というのが目的で、これまでの「産学連携コーナー」を発展させたものです。
初回は、「匠の技:テキスタイル&プリントクリエーションの軌跡」をテーマに、60〜80年代のプリント素材コレクションを展示するなど、さまざまなプリント・デザインが紹介されています。 
  また、昨年の2007A/Wからジャパン・クリエーションの応援企画として開催されている「TOKYO FIBER REVIEW」では、4月に東京・青山で開かれた「TOKYO FIBER ‘07 SENSEWARE」の記録映像と参加クリエーターによるフォーラム(9日、10日)が行われています。
なお、話題のブースや商品紹介はブログで常に更新しますので、ご覧ください。

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JCワーキング委員 : 竹内忠男 氏

 「インデックスコーナー」はテキスタイル・トレンドではなく、ジャパン・クリエーションに出展したテキスタイル企業の最新作を、最終製品のアイテム別に編集したものです。この編集方法は昨年と同じで、テーマは(1)アウター/重衣料、(2)カジュアル/ジーニング、(3)インナー/軽衣料、(4)フォーマル、(5)スポーツ/機能素材、(6)リビング、(7)環境/エコロジーの7つです。
 ここでの目的は、来場された方々にアイテム別の素材傾向を見ていただくのが第一ですが、それと並んでテキスタイル企業の人たちに「どのような素材が、どんなアイテムに使われているのか」ということを学習してもらいたい。最終製品のアイテムを想定して物づくりしていく。これを学んでほしい、という狙いがあります。
 冒頭に「インデックスコーナー」はトレンド発表とはちがう、といいましたが、それでも集まったテキスタイルを編集してみると、時代の傾向が見えてきます。その代表例が、まず上質な素材のウェートが増えていること。そして、表面がフラット、つまりクリアな仕上げになっていて、そこに微妙な表情がつけられていること。それとともに光沢感のバリエーションが広がっている。光沢のあるテキスタイルが主流とはいえないまでも、確実に裾野を広げているのも特徴です。
 テイストでいえば、これば市場ニーズの反映といえるのかもしれませんが、いぜんとしてフェミニン、ロマンチックなものが根強く、シーズンだけでなく年間を通しての傾向になっています。
 一方、テクニカルな部分は表面的に見えにくいものですが、それでもハイテク素材が登場しています。その典型例が、185番手のウールと7デニールのポリエステルでつくった極細織物です。こんな細い糸がひけて、織物にできるのは日本だけではないかと思います。日本の技術力をあらためて認識するテキスタイルを、ぜひ見てください。



 5月9日のJCフォーラムはTOKYO FIBER ‘07「繊維、環境、人間」をテーマに、4月26日から29日まで、スパイラルガーデン&スパイラルールで開催された「TOKYO FIBER ‘07 SENSE WARE」展に参加したクリエーターをパネリストに迎えて行われた。
参加者はTOKYO FIBERの展覧会ディレクションを担当したグラフィック・デザイナーの原研哉氏、テキスタイル・コーディネーションを担当した伊藤忠ファッションシステムの池西美知子氏、ファッション・デザイナーの津村耕輔氏、プロダクト・デザイナーの深澤直人氏、コンセプチュアルなリサイクルショップ、D&DEPARTENT PROJECTを主催するナガオカケンメイ氏の5名。
ディレクターの原氏は「日本の繊維を国内外でアピールすることを考えた時に、服飾よりも産業資材への用途、供給が多い人工繊維が、目的に合わせた機能性を見出していることに焦点を絞ることが適していると考えた」と、4月のTOKYO FIBER ‘07「SENSE WARE」を行うことになった経緯等をまず語り、各デザイナーの方々の作品解説、苦心した点などへと続いた。

薄手でありながら切りっぱなしにでき、端が巻き上がってこないトリコット、「カッティング・フリー・ジャージィ」を用いた津村耕輔氏は、「素材の特徴を最大限に服に反映させるためにはどうすべきかを考えた。シンプルになりすぎる特性に、いかに装飾をのせていくかということを追及し、新しいフリンジ、ミルククラウンと名付けたエッジ(ヘム)のバリエーションといったディテールの工夫と、生地の特性を生かしレーザーカッターで作り出したカットワークのフラワースカルが生まれた」と、展示作品を見せながら発想の過程、作品への思いなどを語った。

深澤氏が用いたのはスーパーオーガンザ。わずか7デニールという極薄のポリエステル織物。もともとはプラズマテレビの電磁波防止用に作られたものだ。「目には見えない悪いものに対する情報が広がり、ケアする時代なったが、ハードなものでプロテクトするのではなく、軽やかに緩やかにシールドされた空間として、シールド・カフェという作品を提案した。この服は電磁波シールドしてないの?というような時代は近いかもしれない」「繊維はデジタル表現だった気がする。ありとあらゆる形に変化できるデジタルだからこそ、さまざまにプログラミングすることができる可能性を持っていると思う。ICレベルのインテリジェント性をも持たせることができる。可能性として巨大なポテンシャルをもっている」と深澤氏は語った。

新たな技術で作られた質の高いフェイク・ファーを用い、直径2.5㍍の大玉「まるっこ」を作り上げたのはロングライフ・デザインをテーマにするながおか氏。
「最初はもっとずっと小さいものだったが、遠くから見てもわかりやすいものをと考えているうちに大きくなった。新しいデザインを生み出すのがデザイナーだが、古いものでも新しく見せるのがデザイナーだと思っている」と話した。
最後に原氏は「繊維がファッションだけでなく、プロダクトの世界との連携がとれれば、大きい市場が生まれてくるという手ごたえを掴んだ。いくつかの未発見の鉱脈を掘り当てられたと思う。JCとの連動なので、今後さまざまな繊維、テーマで魅力を掘り起こしていきたい」と結んだ。





 


 

JC08S/S展が開幕

 ジャパン・クリエーション2008S/S展が9日、東京ビッグサイトで開幕しました。
 貝原良治実行委員長は開会式で、「JCは昨年から改革に取り組み、日本のモノ作りの火を消さないように取り組んでいるところです。今回展の出展者は昨年の春夏展に比べると増えていますが、まだ満足のいく水準ではありません。日本のモノ作りは、自助努力していかなければ残すことはできません。そのことを肝に銘じて、今後さらにステップアップしていきたい」と挨拶しました。
 経済産業省製造産業局繊維課繊維企画官の松尾武志氏は、「JCは広く日本の素材を紹介する大きな役割を担っています。素材を使った製品が店頭に並ぶように、いかに見せ、魅了するかが大事です」と、展示会への期待感を述べられました。

 
 

伊藤弘子さん(ゼロゼロエスエス 翡翠デザイナー) JCに来場

 ジャパン・クリエーションは以前から来ています。JCがきっかけで取引を始めるようになったテキスタイルメーカーは多いです。今回展はそんな出展メーカーが10社くらいありますね。私以外にもJCに素材を探しに来るデザイナーは多く、もっとも活用されている素材展でしょう。私は国産素材にこだわって作っていますので、素材展はなるべく行くようにしています。その中でも、JCは規模が大きく、重要なテキスタイル展です。年2回の開催になって、春夏素材が探しやすくなりました。12月展だけだと、どうしても秋冬素材に偏りがちですから。
 ゾーニングが前回からプロモーションとビジネスに分かれましたが、ビジネスゾーンの出展者は商品を絞っている点が見やすいですね。プロモーションゾーンの出展者は壁がないほうが、分かりやすいのに残念だと思いました。「ジャパン・テックス・プロモーション」は面白い企画ですが、地味な展示方法で場所も見つけにくいのではないでしょうか。また、インデックスコーナーは素材を探すのに有効ですが、ブース番号が分かりにくかったです。
 テキスタイル展は規模が大きく、国内外のメーカーが多く出展されているほうが便利で望ましいと思います。産地企業の中には産地展以外には、JCくらいしか出展しないメーカーもあるので、日本で最大規模のJCに期待しています。また、JCのホームページがJFWなど関連するホームページと多くリンクしていれば便利だと思います。(談)

 
 

ビジネス交流会

 9日18時からはビジネス交流会が行われました。壇上では来賓の経済産業省製造産業局局長 細野哲治氏は「素晴らしい日本のテキスタイルを更に強化し、日本からアジアに向けての発信力の源であることを期待しています」と、独立行政法人中小企業基盤整備機構理事長は「昨年より年2回開催、ビジネスゾーンとプロモーションゾーンの設定、企業間連携の強化など、強化・改善されていることも目につきました。日本を代表する素材展として発展してください」と述べました。
 このビジネス交流会は出展者と来場バイヤーが互いの忌憚ない意見を交換する場としても定着しています。社団法人日本アパレル産業協会理事長の中瀬雅通氏は「アパレルの側から見れば、ビジネスにどう結び付けていくかが今後の鍵だと思います。一緒にやっていく気持ちで取り組むことの必要性を感じています」と話しました。

 

JAPAN CREATION 2008S/S 来場者数

 

1日目

2日目

3日目

合計

アパレル

1,254 2,312 2,361 5,927

小売

127 257 310 694

問屋・商社・企画会社

865 2,020 1,964 4,849

一般

556 1,143 743 2,442

プレス

68 58 52 178

海外

27 25 37 89

特別ご招待

449 893 936 2,278
合計

3,346

6,708

6,403

16,457