開催レポート -Part 2-
日本ファッション・ウィーク推進機構(JFW)主催の「JFWテキスタイル・フェア 2019秋冬」が11月21日~22日、東京・有楽町の東京国際フォーラム・展示ホールで開催されました。「Premium Textile Japan 2019Autumn/Winter(PTJ2019AW)」、「JFW JAPAN CREATION 2019(JFW-JC2019)」で構成。展示商談とともに、さまざまな関連プログラムも催されましたが、昨年並みの多くの来場者を集め、無事閉幕いたしました。
出展応募は今回も過去最大規模でした。厳選された出展者によりPTJは82件・118.1小間(昨年実績82件・117.1小間)、JFW-JCは282社/89件・212.8小間(284社/99件・222.8小間)の規模で開かれました。うち海外からの出展はPTJが4件・4小間(イタリア、韓国2件、トルコ)、JFW-JCが12社・19小間(韓国、台湾、スイス)でした。
2日間の来場者数は17,220人と前年並み。高水準で安定しており、衣料市場が苦戦する中で、新しい商材を探すバイヤーが多く訪れました。海外からの来場者もアジア以外の人も目立っていました。衣料市場の不振は日本だけではありません。差別化のために日本素材に期待するバイヤーを多く見かけました。
[会 期]
2018年11月21日(水)・22日(木)
[会 場]
東京国際フォーラム ホールE
[主 催]
一般社団法人日本ファッション・ウィーク推進機構
[出展者数]
PTJ2019AW:82件118.1小間(うち海外4件4小間) PTJ出展者一覧 ⇒ JFW-JC2019:282社/89件・212.8小間(うち海外12社19小間) JFW-JC出展者一覧 ⇒
[来場者数]
総数17,220人(前年比98.5%)
PTJ2019AW、JFW-JC2019の開催レポートを2回に分けてお届けします。
Part.1(配信済み⇒記事ページへ)
・来場者の声
・出展者の声
Part.2
・Textile Workshop ~日本の素材を学ぼう!~ ・12th FORM PRESENTATION -第12回産学コラボレーション- ・PIGGY’S SPECIAL ピッグスキン・ファッションショー
PTJ関連プログラムとして開かれた「Textile Workshop~日本の素材を学ぼう!~」は6回目となりました。初日(11月21日)の「テキスタイルワークショップ」は、JFWテキスタイルコーディネーターの井上佐知子、久山真弓氏が日本の22の繊維産地の概略を紹介するとともに、「尾州産地は生地幅が145~150cmのW幅で、1反は50m。価格は1m 1500~2000円。ただし、獣毛など1万円以上の生地価格のものあります。ミニマムロットは1色で4~6反。アップチャージは1m当たり1000~2000円です。納期は60~90日ですが、備蓄販売する企業もあります」と、アンケートに基づいた詳細も発信しました。この企画はアパレル、小売、デザイナーメゾンで働く職歴5年未満の人が対象。若手社員の日本製素材への認識向上を目的にするものです。
第2部では株式会社播の鬼塚創氏が播州産地について話されました。鬼塚氏は、産地に移住するまで経歴から始め、「ショッピングモールはないが、水が豊富な土地。日本製シャツ地の約8割はこの播州で生産されている」と続けました。その後、播州産地の生産工程についてスライドを交えて説明し、自身が関わった100番単糸の綿ストール、ヘソデニムの開発エピソードなどを紹介。
ストールは100番単糸という非常に細い糸を使いますので、糸切れのリスクが高い。それでも生産現場に通うことで、「この銘柄の糸ならできる。このサイジングなら可能になる。そうした可能性の組合せによって実現できた」といった話をされました。へそデニムも、デニムの本場の児島から糸を持ってくるのでは差異がないと、播磨染工でかせ染めを応用してインディゴ染めにしたといった工夫を語られました。
産地の職人との対話から新しいモノ作りが生まれた経験談に、受講者は「講師の人が若く、親近感がわき、身近な感じがした」「職人の技のすばらしさを知った」と感想を述べていました。鬼塚さんは、「今回はプロジェクターを使うことができ、産地の写真を皆さんにお見せできた。移住して以来、撮りためた写真を使った。今後はぜひ、産地にも足を運んでほしい。きっと、何かヒントを見つけることができると思う」と感想を述べておられました。
PTJ2日目(22日)の「テキスタイルワークショップ」では、第一織物株式会社の吉岡隆治社長が福井産地の概要、織機の違いなどを説明されるとともに、同社の特徴を紹介しました。
産地は輸出羽二重から昭和戦前には人絹織物、高度成長期以降は合成繊維織物へと変化し、合繊メーカー系列の賃織りが主体でした。量的にも、素材の種類にも幅があります。また、撚糸、仮撚り、サイジング、製織、染色加工など分業が発達しています。委託生産の賃織りが多く、同社も帝人の産業資材向けが中心でした。しかし、同社は現在、自販比率が97%まで上昇しています。
自販比率を高めることは「リスクテークするということ。生機は自社で在庫する。そのためには、加工や販売もわからないといけないし、輸出も手掛けないといけない」と説明しました。現在、97%の自販のうち、30%が欧州向けで、国内向けは30%。アジア向け30%で、残りが米国向けという販売構成です。「輸出もするが、最もいい市場は日本。規模もあり、政治などにも左右されない」と語っています。かつては年に25回も世界中を売り歩いた経験からの言葉です。国内向けでは10品番10数色のカラーストックを持っています。「ミニマムロットが1カラー6~10反、納期は2カ月といった対応では買ってもらえない」のが今のビジネスと指摘されました。
そうした同社のヒット商品のポリエステル超高密度織物を最初に認めたのは「日本ではなく、欧州のブランド」でした。高密度織物はハリコシがあるのが通常ですが、同社の生地は柔らかく、畳めて、シワになりにくい。この技術は産業資材で培ったものでした。薄手のダウン生地として採用されましたが、ソフトに織ることで、羽毛抜けしないことも特徴です。
「北陸の12~13の染工場と付き合う。工場によって風合いが全く異なる。求められる風合いによって、染工場を使い分ける」ようです。海外貿易も商社を通さず自前で行いますが、国内でも直販しています。
受講者は「普段聞くことのできない現場のモノ作りの声を聞くことができた。生地がどのように作られているかが、良く分かった」「勉強になった。吉岡社長の考えを知ることができた。日本のファッションセンスは世界1。産地と一緒にモノ作りをしていこうというメッセージが良かった」とコメントしました。
吉岡社長も「受講された方々は熱心に聞いておられた。これからの時代はデザイナーと一緒に取り組んでいくことも重要」とし、「国内での販売を伸ばし、5割にしていきたい」と述べられました。
人材育成産学コラボ「FORM PRESENTATION」(繊維ファッション産学協議会主催)がロビーギャラリーで開かれました。8校8グループが「播州織物(アーカイブ・ミックス)」を素材テーマに作品を発表。事前に「播州織大学」で学生に素材知識を講義、産地も訪問して素材の提供を受けました。期間中は学生が来場者に直接プレゼンテーションするのも特徴といえます。
ドレスメーカー学院の「おむすび」チームは、「紙のような張り感のある生地を使いブリティッシュと和をミックス」しました。「生地の硬さでシルエットができた」と説明していました。袖や身頃などにも布を縫い縮めてダイヤモンド型に襞山を作りました。合皮でお祝いの席で用いる水引をモチーフにしてベルトも作りました。
チームメンバーは「多くの来場者が来られ、最初は説明するのに緊張していた。一体、何を聞かれるのだろうと。それでも徐々に慣れて乗り切ることができた」とコメント。「これに参加する以前から播州産地という名前を知っていましたか」という質問には「知らなかった。今回の播州織大学で知り、現地を訪れてよく理解できた」と答えました。ちなみに、「服はどこで買いますか」という質問には「店頭で見て、ネットで買う」「ネットでは買わない。やはり試着してみないと」と、分かれていました。現代の消費者でもあります。
東京モード学園の「エターナルライフ」チームは、播州織の生地のストライプ柄をアイロンワークで曲線にし、接着芯地で固定。「年輪のような美しい曲線にした」点が、新しい発想として注目されました。「30mの生地を加工するのは大変」で、それをピースにしてジャケットなどを制作しました。持ち込んだタブレットではモデルが着用した画像や加工工程を映し出していました。「これだけ生地に正面から向き合ったのは初めての経験」でした。
播州産地については、今回の企画に参加するまで「知らなかった」と答えましたが、会場には「西脇市長(片山象三氏)も訪れて、私たちのプレゼンを聞いていただき、産地への親近感が増しました」とコメントされています。
主催者の繊維ファッション産学協議会は「今回で12回目。播州という地名も知らない学生だったが、素材を知り、興味を持った。プレゼンも自分たちで行うことが勉強にもなる。ゼロに近い知識だったが、学生の吸収力はすごい」と話していました。また、「回を重ねるごとに、学生のプレゼンが上手になった。就職対策にもなる。作品もステレオタイプ的なものは少なく、応募校も増えている」と、会場でコメントされました。
12月14日には東京都・渋谷区の「文化ファッションインキュベーションセンター」で、「産学コラボレーション・報告会」が開かれました。参加8グループが作品のプレゼンを行った後、テキスタイルと作品の適合性、作品表現の独自性などを基準に最優秀賞と優秀賞を決定。最優秀賞は文化服装学院のアスクチーム、優秀賞は香蘭ファッションデザイン専門学校の祭福チームに決まりました。
アスクチームは「生成段階」をテーマに、時代とともに積み重なっていくモノ、という考えを作品に表現、環境悪化や省資源という問題も盛り込みました。ジャケットを脱いだら背負えるリュック、スカートがパンツになるなどに独創性がありました。表彰式で同チームは「受賞できるとは思っていなかったのでうれしい」と喜びの声を上げていました。
作品講評で北播磨地場産業開発機構の古谷稔氏が「6月の播州織大学から、8グループ選出、作品展示、今回の成果報告会まで約半年が経過した。通常は作品を作った段階で終わるが、このプロジェクトは展示発表後も続き、教育という面のやり方として素晴らしい。提供した生地を7チームがさらに加工されたが、これも産地側のヒントになった」と、評価されました。
最優秀賞
文化服装学院
優秀賞
香蘭ファッションデザイン専門学校
東京都・東京製革業産地振興協議会主催のピッグスキン・ファッションショー「PIGGY’S SPECIAL」が11月22日、東京国際フォーラムのロビーギャラリーに特設会場を設けて開かれました。ピッグスキンは全国の9割が東京都で作られている「東京の特産品」です。食肉の副産物を使用していますので、すべて国産で自給可能の素材です。最近は非クロムなめしも増え、サスティナブル(持続可能な)素材としても注目されています。
ショーは1日に4回公演されました。学生ショーには12校70チームが参加。プロは城間志保、三浦メグ、林宏美の3デザイナーがピッグスキンを使って30体を披露しました。
城間氏はプリントや箔加工でグラフィカルなレザーを表現。純白レザーへの大判プリントや同じ柄でリピートを組み、「インクジェットが想像以上にきれいに仕上がって驚いた。今後も活用したい」と述べておられます。
三浦さんは「布地に近いデザインの考え方ができる素材」、林さんは「工場で作業工程を体験し、今後の新たな発見や工夫につながる」とコメントされました。
■国内展
Premium Textile Japan 2020 Spring/Summer
会期:2019年5月21日(火)・22日(水)
会場:東京国際フォーラム ホールE
※出展エントリー受付:12月3日(月) 開始予定
JFW JAPAN CREATION 2020
会期:2019年11月19日(火)・20日(水)
■同時開催 Premium Textile Japan 2020 Autumn/Winter
■海外展
□“The Japan Observatory” at Milano Unica
2020 Spring/Summer
会期:2019年2月5日(火)~7日(木)
会場:Rho Fieramilano
※出展エントリー受付は締め切りました
2020 Autumn/Winter
会期:2019年7月上旬(予定)
※出展エントリー受付開始(予定):2019年1月中旬
□Intertextile Shanghai Apparel Fabrics
Japan Pavilion 2019 Spring Edition
会期:2019年3月12日(火)~14日(木)
会場:中国 国家会展中心(上海)
Japan Pavilion 2019 Autumn Edition
会期:2019年9月下旬~10月中旬(予定)
※出展エントリー受付開始(予定):2019年3月
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