開催レポート -Part 2-
日本ファッション・ウィーク推進機構(JFW)主催の「JFWテキスタイル・フェア 2018秋冬」が11月28日~29日、東京・有楽町の東京国際フォーラム・ホールEで開催されました。「Premium Textile Japan 2018Autumn/Winter(PTJ2018AW)」、「JFW JAPAN CREATION 2018(JFW-JC2018)」で構成し、さまざまな関連プログラムも催されましたが、無事閉幕いたしました。
過去最大規模の出展申し込みを更新した今回は、PTJが82件・117.1小間(昨年実績85件・115.6小間)、JFW-JCが284社/99件・222.8小間(98件・218.2小間)。うち海外からの出展はPTJが4件・4小間(韓国2件、トルコ、イタリア)、JFW-JCが22件・28小間(韓国12件・14小間、台湾10件・14小間)でした。
国内の衣料商戦は厳しいものの、来場者数は1万7469人と前年を7%上回りました。新しい商材を探すバイヤーが多く、新興アパレルやメゾン系アパレルのほか、非衣料分野のバイヤーの来場も増えています。日本だけでなく中国からも差別化のために日本素材を求めて多くのバイヤーが訪れました。「J∞クオリティー商品認証制度」など国産商品の見直しが続いており、海外ブランドからも評価の高い日本素材への期待感は依然として高いと言えます。
[会 期]
2017年11月28日(火)・29日(水)
[会 場]
東京国際フォーラム ホールE
[主 催]
一般社団法人日本ファッション・ウィーク推進機構
[出展者数]
PTJ2018AW:82件117.1小間(うち海外4件4小間) PTJ出展者一覧 ⇒ JFW-JC2018:284社222.8小間(うち海外22件28小間) JFW-JC出展者一覧 ⇒
[来場者数]
総数17,469人(前年比107%)
PTJ2018AW、JFW-JC2018の開催レポートを2回に分けてお届けします。
Part.1(配信済み⇒記事ページへ)
・来場者の声
・出展者の声
Part.2
・Textile Workshop ~日本の素材を学ぼう!~ ・11th FORM PRESENTATION -第11回産学コラボレーション- ・PIGGY’S SPECIAL ピッグスキン・ファッションショー
PTJ関連プログラムとして開かれた「Textile Workshop~日本の素材を学ぼう!~」は初日(11月28日)、日本の20の繊維産地の概略紹介とともに、(株)ミワの今井毅繊維部担当部長が桐生産地のジャカード織について講義しました。これはJFW-JC、PTJ出展の産地企業人を講師に招き、繊維業界人となって間もない(職歴5年未満)商品企画などの若手社員を対象に、寺子屋風に素材や産地への理解を深めてもらうのが目的です。産地概要の部では各産地の特徴のほか、アンケート調査による生地価格、ロット、アップチャージ、納期などのビジネス情報も提供しました。
素材テーマの部ではミワの今井部長が登場。桐生産地は714年に朝廷へ「あしぎぬ」を献上したと続日本書紀に書かれており、関ヶ原の戦いでは徳川方に旗絹を献上したことで天領となりました。江戸時代には現在の分業体制がほぼ確立したなど、桐生産地の歴史を紹介しました。和装中心でしたが、婦人服地の生産が始まったのは1955年くらいからです。
今井部長はジャカード織機の種類を説明した後、桐生の経錦織、緯錦織、風通織など7つの技法について持参したサンプルを交えて説明しました。糸を変えることによる光沢に違い、加工による変化などにも触れました。「産地は多品種・小ロット・短納期が加速している。織機の高速化が進むが、低速織機の良さもあり、そうした生地は海外での評価も高い」と現状を語り、「若い人にはその感性を生かして新たな創造をしてほしい。そのために産地がある」と述べました。
参加者は「素材や産地について興味がわいた」(デザイナー)、「ジャカードの組織などを勉強したかったが、良く分かった」(アパレル)、「いろんな産地の特徴を一度に知ることができた」(インクジェット会社)とコメント。今井部長は「産地の素材が細かい作業によって作られていることを若い人にも理解してもらいたかった」と講義後に話していました。
29日には福井産地の(株)山﨑ビロード山﨑昌二会長が福井産地の概要と自社のベルベットの生産などをレクチャーしました。「福井は和装の裏地に使われた羽二重の産地だった。昭和30年代にナイロン、40年代にポリエステルが入り、今では薄地の高密度織物産地として知られる。衣料だけでなく、農業、土木、エアバッグなどにも使われている」と紹介。一方、「レーヨン100%のビロードを中近東に輸出していた時期もあったが、輸出禁止となった。昔50社あったビロード製造業者は今、7社ほどになった」と話されました。
そのビロード織物は約400年前にスペイン・ポルトガルの宣教師が持ち込んだのが始まりで、堺の商人が陣羽織にして織田信長に献上し、実物は滋賀県埋蔵文化センターに保存されています。そうした歴史とともに、スペイン語でヴェロード、英語でベルベット、仏語でベロアと呼ぶと説明した。中国や日本漢字では「天鵞絨(びろうど)」と書き、日本古来には「本天」(経緯とも絹で織られたビロード)、「絹天」(絹のような光沢のある綿ビロードという説も)、「切天」(パイルを切って毛羽を出したビロード)とも呼ばれました。山﨑会長はニューヨーク近代美術館に永久所蔵された同社の作品制作の裏話、テレフォンカードに使用された世界一薄いビロード、15年かけて開発しているリネンビロードについても触れました。
「リネンビロードは柔らかく、一年中着ることができる。糊を付けずに織るので、経糸は綿糸だが15年かかった。人がやらないものを、やれるまでやるという信念でここまできた。リネン100%の完成は息子に託す」と語りました。
参加者からは「アイロンなどでビロードの毛がつぶれたときの対応策は」といった質問が出たほか、「本天の意味が初めてわかった」(下駄製造業)、「ビロードの製造方法を理解することができた」(アパレル)、「素材の魅力を知り、次のシーズンでビロードも使いたくなった」(デザイナー)という声が聞かれました。山﨑会長は「デザイナーやファッションを目指す人には生産の現場を見てほしい。これまでのことを話すには本当は1時間ほど時間がほしかったが、少しでもモノ作りへの思いが伝われば」と感想を述べました。
人材育成産学コラボレーション「FORM PRESENTATION」(繊維ファッション産学協議会 主催)が東京国際フォーラムのロビーギャラリーで開かれました。7校8グループが旭化成(株)の「ベンベルグ®」をテーマに作品を発表。
旭化成は、6月に講座「ベンベルグ大学」で学生(東西で約350人)に素材知識を講義しました。講座では再生セルロースのキュプラの繊維断面が真円に近いことで、滑らかさや美しい光沢を生むと説明。非晶部分の多い結晶構造のため、コットンの約2倍の吸放湿性を有し、蒸れない“呼吸する繊維”になりました。また、接触冷感と吸湿発熱性が夏は涼しく、冬暖かい特性を実現しています。エコロジー性や多様な用途展開も紹介しました。
その後の審査を経て、8グループの出場が決まり、8月には滋賀県の商品科学研究所で研修会を開くとともに、学生への素材の提供も行いました。
11月の会場では、旭化成は作品コーナーの横に展示ブースを設けてベンベルグ年表、生産拠点、素材などを紹介。体感コーナーやベンベルグ裏地使いの商品プレゼントを行ったほか、学生の製作過程を紹介するビデオも会場で放映しました。
東京モード学園のイアングループは「授業の一環で神保町にあるベンベルグ裏地ミュージアム+には行ったことがあった。しかし、表地に使えるとは思っていなかった。講義を受けて用途の広がりや、素材の可能性を知った。生地にストライプの柄を入れ、プリーツも施した」。プレゼンテーションもしっかり行うことができ、作品についても「プロの方ならではのアドバイスをいただいた」と述べました。
エスモードジャポン東京校のチルグループはオフタイムウエアとして近未来の日常着を制作しました。シンプルだがディテールにこだわり、縫製の始末にも留意しました。「肌に接触する部分を袋縫いにした。キュプラは泥染めにすると大理石の柄が表現できた」と、生地加工にも面白さを感じたようです。商品科学研究所の訪問では「ベンベルグの作り手の思いに熱量を感じた」と話していました。
同校のタカギスポーツグループは都会のアウトドアをテーマにした服を制作。快適性について質問すると、「着ているときに、苦にならない服。心地良く楽しめる服」と答えました。「ボリュームのあるデザインでもベンベルグなら軽く仕上がった。できるだけ肌触りのよい生地特性を生かした」。プリントは染色工場の協力を得て、ぼかしのグラデーションにしました。商品科学研究所についても、「研究所は見たことがなかった。裏地だけでなく、スポーティーな生地もあった。吸湿性や制電防止性などの実験もしていただいた」と新しい経験をしたようです。
文化ファッション大学院大学は「ダンシング・オン・ニュープラネット」をテーマにしました。スカートをバルーン状にするため、生地を6m使って制作しました。「ジャンプなど動きが加わると、服の意図が反映されるが、マネキンでは十分には伝えにくい。このため、本物のモデルに着せて動いたときの写真も用意した。プレゼンで伝わったかどうか、少し心配だった」と話していました。
主催の繊維ファッション産学協議会は「ロビーギャラリーを使ったことで広い空間になった。11回目ということで、学校側の指導のポイントも行き届き、各校のレベルの差が小さくなった。東京中心の参加だったが、九州からの参加もあり、出場校のエリアも広がった。作品だけでなく、プレゼン力も問うが、言葉だけでなく、ボードや動画を駆使して説明するようになった」と評価。開講したベンベルグ大学のように、ひとつの素材を系統だって学ぶ機会はなかなかなく、学生にとっては「非常にいい機会」となりました。
協力した旭化成は「学生の考える快適性とは何かに興味を持っていたが、参考になった。ベンベルグの知名度アップにもなり、大成功だった」と感想を述べました。
最優秀賞
エスモードジャポン東京校 チル/Chill
優秀賞
文化服装学院 ピーアイエー/PIA
旭化成賞
香蘭ファッションデザイン専門学校 カプサイズ(覆す)/capsize
ピッグスキンの魅力を生かす
JFW-JCの関連プログラムとして「PIGGY’S SPECIAL~ピッグスキン・ファッションショー」(主催=東京都、東京製革業産地振興協議会)がホールD7で開催されました。11月28日はプロ部門として2ブランド、29日は東京都の各種学校、専修学校12校がピッグスキンを使用した作品を披露しました。ピッグスキンの国内最大の生産地である東京。その魅力と可能性をアピールしました。
28日は「LOKITHO」(木村晶彦デザイナー)、「SHIROMA」(城間志保デザイナー)がショーを開催。木村デザイナーはピッグスキンをいかにエレガントに見せるかをテーマにコレクションを考えました。ピッグスキンには様々な技術がありますが、とくに純白にする技術に注目。他のレザーにない白の美しさ、純白だから出せる美しい染めで、エレガントを表現したそうです。ピッグスキンについて勉強し、使用したことで、「思いのほか使いやすく、面白い素材だった。食肉として消費される以上、継続的に生産できる点でも、他の素材に比べサステイナブルな素材」と、コメントしています。
城間デザイナーはヌーディーなカラーをベースに、ミリタリーやスポーティーなディテールをミックスしました。スエード用になめされた革をあえて銀面使いした点も特徴です。スエードの柔らかさを生かしながら、自然にできた傷をあえて使いたいという理由からです。「特に濃い色目には治り傷がはっきりと出るため、独特な表情が出せた」と述べています。「東京を拠点にしているブランドにとって、他産地と比べても距離が近く、細かく打ち合わせもでき、密に取り組める」点にも優位性があると指摘していました。
29日には専門学校青山ファッションカレッジ、大森家政専門学校、織田ファッション専門学校など12校がショーを開きました。
■国内展
Premium Textile Japan 2019 Spring/Summer
会期:2018年5月9日(水) 10:00-18:30 ~10日(木) 10:00-18:00
会場:東京国際フォーラム ホールE
※出展エントリー受付は締め切りました
JFW JAPAN CREATION 2019
会期:2018年11月21日(水) 10:00-18:30 ~22日(木) 10:00-18:00
■同時開催 Premium Textile Japan 2019 Autumn/Winter
■海外展
□Milano Unica
“The Japan Observatory” at Milano Unica
2019 Spring/Summer
会期:2018年2月6日(火)~8日(木)
会場:Rho Fieramilano
2019 Autumn/Winter
会期:2018年7月10日(火)~12日(木)
※出展エントリー受付開始(予定):2018年1月中旬
□Intertextile Shanghai Apparel Fabrics
Japan Pavilion 2018 Spring Edition
会期:2018年3月14日(水)~16日(金)
会場:中国 国家会展中心(上海)
Japan Pavilion 2018 Autumn Edition
会期:2018年9月下旬~10月中旬
※出展エントリー受付開始(予定):2018年3月中旬
■ 年末年始休業の知らせ JFWテキスタイル事業 事務局は下記の期間を年末年始休業とさせていただきます。
2017年12月28日(木)~2018年1月4日(木) ※1月5日(金)より、通常業務となります。
何卒ご了承くださいますよう、お願い申し上げます。
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