5月24日~25日に東京国際フォーラムにて開催されましたPTJ2017SS開催レポートのPart 2をお届けします。
日本ファッション・ウィーク推進機構(JFW)主催の「Premium Textile Japan (PTJ)2017Spring/Summer」が5月24日~25日の会期を終え無事閉幕いたしました。会場の東京国際フォーラム ホールE(展示ホール)では新企画「Textile Workshop~日本の素材を学ぼう!~」も開かれました。
Part 2
・新企画「Textile Workshop~日本の素材を学ぼう!~」 ・今後の海外展示会について
Part 1 (配信済み ⇒記事ページへ)
・出展者の声 ~それぞれに独自性を訴求~ ・来場者の声 ~ゆったりと見やすくなった~
■「Textile Workshop~日本の素材を学ぼう!~」 認識深め、新たな目線で
10回継続実施してきました「ビジネスマッチング・プログラム」。PTJは11回目を迎え、新たなプログラムとして「Textile Workshop~日本の素材を学ぼう!~」を開催しました。
繊維・ファッション業界では「J∞Quality」制度や日本製テキスタイルへの需要増など、ガーメントを生産する際、価格ではなく、“素材”を重視する動きが広がっています。しかし、「なぜ、日本製素材が製品の差別化に寄与できるのか」「どのような産地で製造され、どのような特徴を有しているのか」など、まだ十分に伝わっていないのが現実です。そうした知識は、製品の持つ“ストーリー性”にも関わり、消費者の消費マインドを動かす要因にもなります。
日本の産地企業が集結するPTJにおいて、企業名だけ、取扱い商材だけ、そして見た目、風合いだけでサンプル依頼することから、さらに一歩踏み込んだ見方をし、その素材が持つ背景を知ることで、素材商談会の見方にも新たな目線が生まれると思います。
そこで、アパレル・服飾雑貨メーカー、小売り、デザイナーメゾンなどの若手社員(職歴5年未満)を対象に、日本の素材産地レクチャーを行い、日本製素材への認識を深めていただく商・学を連携させた「Textile Workshop」(以下ワークショップ)を開催しました。
第1回目となる今回のワークショップは、24、25日とも、午前10時半~11時半まで、PTJ会場内の特設レクチャールーム(ビジネスラウンジ)において3部構成で開きました。
< 構成 >
「日本の素材産地とは」 【講師】JFWテキスタイルコーディネーターの井上佐知子氏/久山真弓氏
24日〔リネン〕 【講師】麻絲商会 中辺 雅昭氏 25日〔コットン〕 【講師】鈴木晒整理 専務取締役 鈴木 利尚氏
「テキスタイル合同展示会 来場のノウハウ/Q&A」 【講師】JFWテキスタイル事業事務局
□「日本の素材産地とは」 ~19のテキスタイル産地を紹介~
日本の素材産地として、19の繊維産地が紹介されました。米沢産地は「着尺地、袴地などの絹、絹交織織物を基礎にして、現在は化合繊長繊維をベースにした複合素材使いの産地です。ジャカード織りや編みのファンシータイプ中心の婦人服地を主力に生産」、富士吉田産地は「甲斐絹(カイキ)と言われる和装の裏地や座布団生地から発展。絹や化合繊長繊維の細番手を使用した高密度先染めジャカードを中心にしています。婦人服、ネクタイ、傘などのファッション用途、インテリア用途の素材まで生産する多品種産地です」といった説明が行われました。
また、「尾州産地は国内ウール総生産の7割を生産する日本最大の毛織物産地」、「備後産地は備後絣の伝統を受け継ぐ産地で、綿デニムのシェアは国内の5割」「高野口は日本で唯一の総合パイル産地。服地のほか、車両シートや寝装、玩具などの用途にも展開しています」といった産地の特徴も解説しました。
□「産地レクチャー リネン」 ~湖東の自然条件が産地を育てた~ 【講師】株式会社麻絲商会 中辺 雅昭 氏
「近江(湖東産地)は山々に囲まれ、琵琶湖から発する湿気が多い土地。高温多湿で内陸性の気候です。この自然条件が、麻の製織、染色仕上げ、加工に最適で、麻織物産地として発展してきました」。麻絲商会の中辺雅昭氏は、湖東産地の自然条件が、麻繊維の湿気を吸うと繊維の強度が増して織りやすくなるという特徴と絡めてその関係を説明しました。麻は消防用ホースにも使用されていますが、強度とともに、水を含むと漏れないという例も挙げました。
「工場では冬季の乾燥時には霧状に水を噴霧して麻糸の強度を保っています」と語り、水撚りという産地独特の工程についても触れました。また、産地は大阪、京都に近く、中山道が通る宿駅として交通の要所でもあり、古くは室町時代から麻布が生産され、近江商人の行商で商品が全国に流通しました。
中辺氏は産地の染色工場と開発した糸の内部が中白になる「ル・ポワン」染めなど、同社の開発商品も紹介。「会場でもブースを出していますが、出展品はごく一部です。会社には過去のサンプルもあります。産地に足を運んでいただき、サンプルを見ながらこうしてほしい、こうならないか、といった会話をしたい。ブランドのイメージに合った素材を一緒に開発するような関係が多くできれば、産地にも若い人たちが入ってきて、産地活性化にもつながります」と語っていました。
●参加者は
「勉強のために参加したが、産地の成り立ちなど参考になりました」「学校以外でこうした話を聞くことができない。麻織物と自然条件の関係など興味深かった。産地にも足を運ばないといけませんね」といった感想が参加者から聞かれました。
□「産地レクチャー コットン」 ~実践の哲学を紹介~ 【講師】鈴木晒整理株式会社 専務取締役 鈴木 利尚 氏
「流行を追いかけるのではなく、自分が着たいもの、世の中にないものを作れば売れます」。鈴木晒整理の鈴木利尚専務は自らの開発ポリシーを熱く語りました。
鈴木氏は商社と産元に勤め、18年前から同社に入りました。「繊維は紡績から始まります。糸だけで何万種類もあり、そうした糸が準備工程を通って機屋さんに供給され、染工場に入ってきます。当社の“晒”という字は、日が西に沈むまで、川にさらしてきれいに白くさせることを意味します。染色には後染め以外にも先染め、プリント、インクジェットなどもあります。実に多くの工程があり、そうしたことを知ることは非常に重要です」と話しました。
また、綿花の中長綿、長綿、超長綿の違いを説明するとともに、「綿素材でも1メートル3000円を超える高級素材もあります」と紹介。
さらに「実践の哲学」として、「入社5年目で3品番、50万反を作り、3年で完売しました。そのヒット素材は海外情報をリプロしたものではなく、今までにないものを作ったから売れたのです。モノ作りは無限にある。今回、ブースで発表した弊社の綿のブラックフォーマルともいえる“漆黒”は、数社の染料メーカーと開発しました。多くの専門家との接点を持てば、自分のモノ作りに近づけます」とアドバイス。最後に遠州産地の特徴を紹介しました。
「自分でこれからどういう生地を作ったらいいか、迷っていました。ヒントになりました」「加工についての知識がありませんでした。これからの仕事に活かしたいと思います」と、モノ作りの参考になったようです。
ワークショップは今後も改善を重ねて、継続企画として進化させていきます。
■ 今後の海外展示会について
第23回目となる「Milano Unica(MU)2017AW」が9月6日~8日まで、イタリアのミラノ市内の新会場「フィエラ・ミラノ・ロー」で開催されます。この展示会にJFW、ジェトロが主催、日本繊維産業連盟の協力を得て「The Japan Observatory at Milano Unica 2017AW」として38社・団体(620平方m)が出展します。
貝原良治JFWテキスタイル事業運営委員長は「これまで出展された方からビジネスができたと、いい評価があります。また、欧州において日本素材への評価を高めるきっかけにもつながっています。9月展に向け、そうした期待にたがわぬ準備を進めていきます」と語っています。
また、10月11日~13日には中国・上海の中国国家会展中心で「インターテキスタイル上海(アパレルファブリック)2016Autumn Edition」が開かれ、ジャパン・パビリオンには今回41社(114小間)が出展します。中小企業の出展が増え、うち新規参加は9社です。
Photo:The Japan Observatory at MU 2017SS <ミラノ>
Photo: Japan Pavilion 2016Spring Edition <上海>
【国内展】
Premium Textile Japan 2017 Autumn/Wineter
JFW JAPAN CREATION 2017
“同時開催”
会期:2016年11月29日(火)~30日(水) 会場:東京国際フォーラム ホールE
【海外展】
The Japan Observatory at Milano Unica 2017AW
会期:2016年9月6日(火)~8日(木) 会場:Fiera Milano Rho
Japan Pavilion 2016 Autumn Edition Intertextile Shanghai Apparel Fabrics
会期:2016年10月11日(火)~13日(木) 会場:中国 国家会展中心(上海)
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