Vol.1 / Vol.2 / Vol.3

JCのゲートをくぐると左斜め前方にテキスタイルコンテストに入賞した個性的な布が出迎えてくれます。
JCテキスタイルコンテストは、審査員がファッションデザイナー、テキスタイルデザイナー、アパレル企業のマーケティング担当者等で構成されていることもあり、タペストリー的なインテリア作品に偏りがちなテキスタイルデザイン展の中では、より実用的で、アパレル用途の作品が多いことが特徴です。と言ってもコンテスト作品であり、通常の仕事とは異なる実験的、意欲的な作品が目立ちます。


テキスタイル、アパレルのプロが集まるJC会場の中でも、最も注目を集める場であり、作品の制作方法等を解明しようと、作品を凝視し、考え込む姿も見られます。
今回のグランプリ作品は、シルクの生地に漆をプリントしたもの。シルクのしなやかさと漆部分の固さ、艶消しの黒地の上に艶のある黒が重ねられ、官能的な表情を見せています。「ランプウェード等にも活用できるのでは」という作者のコメントにあるように、様々な分野のデザイナーの創作意欲をかき立てる作品に仕上がっています。
(JC実行委員会コーディネーター 坂口昌章)


JCでは、現在、産学連携のあり方を検討していますが、今回はプレイベントの提案として、テキスタイルコンテストの審査委員長でもある皆川魔鬼子さんプロデュースの「ウェァーテキスタイル」を展示しました。そこで皆川さんに今回の企画についてお聞きしました。

◆皆川魔鬼子さんのコメント
プルミエールビジョンでも、英国のテキスタイルデザイン専攻学生のウェアにアプローチする作品コンテストが非常に高い評価を受けており、日本人の学生も入賞するなど、プロへの登竜門となっています。
今回は、企画スケジュールの都合もあり、多摩美術大学3年の学生が課題が制作したウェアーのためのデザイン作品を展示していますが、今後はより多くのテキスタイルデザイン専攻を持っている大学等の参加を期待しています。いくつかの学校が競作したり、希望する学校が多くなればコンペにするのも面白いと思います。
服を作れない学生でも、服の形でデザイン提案することは可能ですし、特定のテーマを設定することでタイムリーなデザインも期待できます。今後は、JCに出展されているテキスタイルを使った作品を発表したり、テキスタイルコンテストでウェアーテキスタイル部門を作るなども考えられます。

大正紡績株式会社
取締役営業部長
東京事務所長
近藤健一氏


コットンは北緯45度、南緯35度の86カ国で商業生産されています。しかし、米国と中国、インドの3カ国で、全世界のコットン生産の50%を占めます。したがって、差別化を図ろうとすれば、この3カ国以外の希少価値のある綿花を使わなければアピールできません。

昔は安くて品質のいい綿糸を生産すれば良かったのですが、いまは高くても特色のある高級品を生産しなければ生き残れません。以前のように様々な綿花をブレンドする代わりに、単一原綿で特徴を出すわけです。綿花によって複合する相手素材との相性の良し悪しがありますから、世界中を回って綿花を捜すのは楽しい作業でもあります。
川上から川下までの企業が連携して差別化する新しいビジネスモデルを築けば、日本の繊維産業は将来への活路を開けると思います。
綿花を1キロ収穫するためには、5キロの農薬が必要です。綿花の原種は実は茶色で、これを改良して真っ白な綿花を作れるようにしたのですが、改良した綿花は弱くて大量の農薬が必要になりました。当社では環境保護の観点から、オーガニックコットンを重視しています。また、オーガニックコットンは軽量で、暖かいのも特徴です。カシミヤなど他素材と複合すれば、コットンは年間を通じて使える素材になります。世界でオーガニックコットンの生産に熱心な国は米国、インド、トルコです。

 


カイハラ株式会社
会長 貝原良治 氏

 藍(インディゴ)染色は、酸化で青色に染まるため、染める人により十人十色と言えるほど色が変わります。当社はロープ染色を考案して、安定した染色や量産化、染料の節約を実現。このロープ染色機を発売し、絣の生産増にも寄与しました。その後、輸出用に広幅化の依頼があり、自動織機で広幅の絣を織る技術も実現しました。同織物はあまり売れなかったのですが、イスラム教徒のサロン向けで一時はかなりの輸出がありました。さらに1969年に日本でもデニムブームとなり、デニム生産の依頼が来たことから、デニム生産に乗り出しました。賃加工でデニムの染色を行っていました。
 当時のデニムはまだ、米国など海外からの輸入が多く、輸入品を何とか駆逐するまでになりたいと思ったものです。クラボウが高速織機のスルザーで生産するため、それまでは太番手は良い原綿でなくてもいいと考えられていたものを、中番手用の原綿でデニム用の太番手を生産されました。緯糸の供給もラージパッケージ化するなど、画期的な改良を行われました。1973年からは輸出を開始。リーバイスにも購入してもらえるようになりました。同社は数値で基準を設けておられ、当初は高いハードルでしたが、一度クリアすれば後は大丈夫でした。デニムのような綾織物は洗うとよじれます。リーバイスからはそのよじれを防止するノウハウを伝授してもらいました。
 輸出では円高にも苦しみました。しかし、デニムはコストに占める綿花の比率が高い。綿花は輸入品ですので、綿織物の中ではもっとも為替リスクを回避して輸出しやすい商品だと考えています。世界の視点から、日本を見られたことも輸出を手がけていた利点だと思います。最初からパーフェクトを目指すのは無理があります。失敗を恐れず、まず足を踏み出すことが大事です。「Nobody can do, but we can do.」をキャッチフレーズにしておられる企業がありますが、常に前進して新商品の開発に取り組むなど、努力してきたからこそ、今日まで存続できたのだと思います。

 


株式会社東レ
取締役 大河原秀康氏

 合繊や天然繊維を問わずテキスタイル開発が進んできましたが、その背景には日本の産地の優れた匠の技、生産管理技術があると思います。また、最近のポリマーやナノテク技術の進歩は、新たな素材開発を予感させます。
 合繊繊維はポリマー技術、製糸技術、高次加工技術の連携で、開発が進んできました。やがて天然繊維に近づけるだけでなく、合繊でしかできないテキスタイルの追求も行われるようになりました。開発に携わる者でも、ここまでやるのかと思うほどです。しかし、日本市場でビジネスして行こうとすれば、本当に細かい消費者の感覚に応えていかなければなりません。言い換えれば、そこまで質の違いを感じられる消費者に育てられて、世界に誇れる技術を開発できたと言えます。
 非石油系素材の採用やリサイクル、省エネルギーなど、環境負荷を低減させる技術の開発も進みました。衣料で培った技術をベースに、ワイピングクロスや炭素繊維など先端産業を支える資材用途への展開も盛んです。極細繊維や分子レベルでの加工技術の追求など、今後さらに開発は進むと予想されます。
 「繊維ビジョン」は、日本の繊維産業を活性化させる提言を行っています。その提言にもあるように技術開発と人材教育、国内外に市場を求めることで日本の繊維産業は今後も世界と競争して発展していけると思います。

 


 

 

ユーロベットの新会長がJCを訪問

フランス見本市協会「ユーロベット」のマリーロール・ベロンホップス会長がJC会場に来られました。同協会は「ティッシュプルミエ」展などを主催しているほか、プルミエール・ヴィジョンにもこのほど資本参加しました。今後一層の活躍が期待されています。

JCとのタイアップを希望
ユーロベット会長
マリーロール・ベロンホップスさん

【マリーロール・ベロンホップス会長のコメント】
JCが今回、会場を2つのゾーンに分けて構成されたことは、とても面白い試みです。日本を代表するJCとは今後ぜひタイアップし、業界に新しい風を吹き込みたいと思います。JC事務局にも、タイアップについて申し入れをしました。

 

JAPAN CREATION 2007A/W 来場者数

 

1日目

2日目

3日目

合計

アパレル

2,825 4,119 - 6,944

小売

643 839 - 1,482

問屋・商社・企画会社

3,478 4,810 - 8,288

一般

4,074 4,927 - 9,001

プレス

76 88 - 164

海外

35 32 - 67

特別ご招待

1,424 1,665 - 3,089
合計

12,555

16,480

-

29,035

PAGE TOP